吹け上がる4A-G!空気を切り裂く排気音! タイヤの焼ける匂い!忘れかけた魂の鼓動 我がハチロク青春時代 第10話 @
親が経営する整備工場に純が86の整備をしている よし!ダイレクトイグニッション取り付け完了…これで高速回転でも点火が安定する…かも(笑)せっかく5バルブ載せてんだからこの位はしないとなぁ(純)最近の車は当たり前の装置だが当時はディストリビューター経由の点火が一般的。
ダイレクトなんとか?俺にはわかんねーな…馬力上げりゃいいんじゃね?簡単に速くなるべよ!? (純のダチの孝)そんな簡単じゃないのよね〜要はバランスよ…車って走る曲がる止まるの三拍子が揃ってないとただの駄目車になるのよ。普通の車にF1エンジン載せてもまともに走れないのと同じよ(香織)あ、香織さんいつの間に来てたんですか?(孝)今日非番よ…彼氏でも作ろっかなぁ暇だし(香織)
そっすね〜香織さんの彼氏は太平洋みたいな広い心の持ち主キボンヌ!ぷっ…一瞬笑う孝 なんでよ意味分かんないけど?(香織)超わがままにはその位広くないと付き合うの無理っす!(孝)バシッ!間髪入れずに香織の正拳が孝の腹に… 痛っ…ひでぇな〜善良なる一般市民に暴力を振るう不良警察は免職だぁ…訴えてやる!イタタ(孝)うるさい!アンタいつも一言多いの!フン!(香織)まぁまぁ二人ともその位で…(笑)
パワーはどの位よ?(孝)さぁ…涼さんから受けついだ時にはすでに改造してたし…あとはオヤジと一緒に手を加えた。馬力測る測定器なんてないしね。ただ感じとして200馬力はあるかな!?(純)今どき200かよ?スポーツカーならノーマルでも最低280以上あるべ!最近のGT-Rは480だし…(孝)たくっ!あんたってほんと車知らないわね!馬力だけじゃ速く走れないって言ったでしょ!GT-Rは1500s以上あるの!それに比べハチロクは800s台なの…パワーウエイトレシオ比べたら何ら負けてないのよ!それにハチロクは更に軽量化してるし(香織)
まあ車オンチに何言ってもたこに念仏だろうけど!あはは(香織)たこじゃないし…(孝)直線の速さだけなら下手なスポーツカーより大排気量のアメ車の方が速いよ F1でTOYOTAが勝てないのはコーナリングの差なんだ…直線ではフェラーリより速いがコーナーになると遅い…結果なかなか勝てない訳。決してドライバーの腕ばっかじゃないんだ…足廻りの差が大きい(純)?…やっぱワカンネ…(孝)はぁ…もっと勉強しなさい!(香織) ハイ…シュンとなる孝
今時の車はABSにトラクションコントロールなどドライバーのミスや運転の補助をする装置が付いてる それに比べハチロクはなんも付いてない…ドライバーの腕がダイレクトに表れる車だわ。観てる方は運転テクニックがもろに分かる…余計なの付いてないから初心者のFR車の入門に最適だし改造しても楽しめるわ。デビュー以来30年以上過ぎた今でも愛されてる車って他にないわね(香織)俺は今時の高馬力に乗るな!改造しなくてもいいしかっこいいじゃん!皆の注目の的!(孝) 孝は買えないでしょ!お金ないくせして!腕のない人は遊園地のゴーカートで十分よ あはは(香織)香織さん何かオレに恨みあります?!…(孝)
その日の夜 婦警の香織は自家用車のランエボで湾岸線を走っていた ブォオーー!今日もいい調子ね快調快調!たまにストレス解消で飛ばすのもいいわね!キィー!コーナーを思いきり攻める香織 タイヤが悲鳴をあげる え!?近づいてる?…嘘でしょ!ルームミラーに反射するヘッドライトの光に香織は気付いた このあたしに追いつくなんて… 誰よいったい!?…
香織は全国の高速隊で唯一の女性で、その運転技術を見込まれR34パトに乗っている。並みの腕前では香織には勝てない。 コーナーなかば2速を維持アクセルを踏み込む香織。キィーン!エンジンがうなりを上げると同時に体に強力な横Gがかかる勝負してやるわよ!あたしについてこれる!?コーナーを立ち上がると同時に3速にシフトアップした。ギィィーン!!2000tで世界最強のランエボは猛烈な勢いで加速する
跳ね上がるタコメーターさっきまでの横Gが今度は香織の背中にかかる!バケットシートに体が強制的に押し付けられる!ヘッドライトが照らす狭い視界は加速によりさらに狭くなる…常人ならそれ以上恐怖でアクセルを踏めなくなるだろう…あらゆるスピードレーサー達は恐怖という感覚が切れてる人種だと聞いたことがある その感覚が麻痺するほど、また感じなくなるほどの経験、実力があるのかは解らないただ、その者達に共通するのは自分への挑戦、限界を越える勇気が誰よりも強いことだと思う…